Impression Vol.02 AMG CLS55 from bond group

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ジキルとハイド

一旦停止。頭をリセットし、次なるテストに入る。
“今度は少し振り回してみよう”
そう考えてアクセルを深々と踏み込んだ瞬間、このクルマの持つ「もうひとつの側面」が初めて顔を覗かせた。
突然周囲の景色がコマ送りのように後方へと飛び去り、体中の血液が一瞬後ろへ偏る。まるで突然目を覚ました巨人に漆黒のボディを鷲づかみにされ、力の限り放り投げられたかのような加速が始まったのだ。私はそのあまりの変貌ぶりに、呆然とするしかなかった。アクセルの踏み方ひとつでここまで性格の変わるクルマを、私は知らない。
とはいえもちろん現代のクルマ。その挙動は電子デバイスで完璧に制御されているため、「6.3」など過去のスーパーモデル達のように暴れまわる心配は皆無なので、このクルマのオーナーとなる幸運な人は誰でも、空恐ろしいまでの加速を安全に味わうことができるだろう。

ハンドル・エンジンルーム

続いてはフル加速中、一転して急減速を敢行。
「シャーシはエンジンより速く」――メルセデス・ベンツの掲げたもうひとつのポリシー通り、CLS55は極めて安定した姿勢を保ちながら瞬く間に停止し、そして私はつい先ほど起きたできごとが全く嘘であったかのような平穏に、再び包まれた。
ジキルとハイド・・・高ぶる鼓動を抑えつつ、私は昔見た演劇のことを思い出していた。
AMG CLS55は、恐ろしいまでの二面性を持ったクルマだ。しかし二面性とは言ってもとことん管理をされたものであるところが演劇とは違う点で、ドライバーはどちらの面を楽しむかを、アクセル加減ひとつで選ぶことができる。そしてどちらの面も、きっとオーナーをほぼ完璧に満足させてくれるだろう。

impression,model:三上和美(http://mikamikazumi.net/
text,photo:吉田 央

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