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しかし走り出すと、それまでジェントルに徹していたM5は、徐々にスーパースポーツサルーンとしての片鱗を見せ始める。乗り心地に関しては、ソフトなと言うよりは「しっかりとした」という表現を、またエンジン音に関しては、遠くで囁くようなと言うよりは「しっかりと存在感を示す」という表現を用いた方が、ふさわしい感じになってくるのだ。もちろんこれらは不快という意味ではなく、“この先には、とてつもない世界が広がっている”ということを予感させる類のもので、スポーツドライビングを愛する人々ならば、むしろ心地良いと感じるものであることは言うまでもない。
そしてスロットルペダルを深々と踏み込むと、M5はついにその本来の姿を顕にする。
5リットルV10はレーシーなサウンドとともにレブリミットまで軽々と吹け上がり、気が付けば500馬力オーバーにふさわしい速度まで軽々と到達。しかも圧倒的な加速感であるにもかかわらず、支えるシャーシ/ブレーキもエンジン性能に負けず劣らず強力であるために、ドライバーは不安感なくこの超高性能を引き出せるところがいかにもドイツ車的だ。
さらにスポーツドライビング時に有効な武器となるのが、7段ミッションのSMG Drivelogic。SMGとは「シーケンシャル・マニュアル・ギアボックス」の略で、要するにクラッチを電子制御してギアを変えるシーケンシャルトランスミッションというワケだ。2ペダルで、自動的にシフト操作を行ってくれるDモードと、コンソール上のシフトレバーないしはハンドル横のパドル操作で変速を行うセミ・オートマモードが選べるが、もちろん元気良く走る時に選ぶであろうセミATモードでシフトダウンを行うと、私達レーシングドライバーですら驚くほどの素早さ正確さで「ブォン!」と中吹かしまで入れて確実に変速を行ってくれるからたまらない。

だからM5でコーナーを駆け抜ける作業は、もう“快感のてんこ盛り”状態だ。
コーナー入り口で、確実にスピードを殺してくれるブレーキを踏みながら4→3→2と左側パドル(ダウン側)を引くと、M5は「ブォン!ブォン!ブォン!」と美しいサウンドを奏でながらシフトダウン。手のひらにじわりと汗をかきながら、正確なステアリングを微妙に切りつつエイペックスを探っていくと・・・もう気分はF1! BMWザウバーのドライバーにスカウトされたような気がしてくる。
「このクルマでサーキットを走りたい!」
試乗中、思わずこんな言葉を口走ってしまったのだが、私に心底そう思わせてくれる市販車なんて、実はそうめったに出会えるものではない。コイツは真のスポーツマンだ。4ドア高級セダンの使い勝手を持ちながら、中身はスーパースポーツのBMW M5。このクルマを知ってしまった人は、逆に2ドアボディにこだわる理由を探さなければならないかも知れない。
試乗を終え、美しいエアロをはじめ数々のモディファイが施されたこのクルマを、あらためて見つめてみる。私に買える、買えないの話はさておき、掲げられた1300万円のプライスタッグが、段々とお買い得に見えてきたのは気のせいだろうか?
impression,model:三上和美(http://mikamikazumi.net/)
text,photo:吉田 央
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